「味覚を取り戻すための食環境」
長谷川クリニック院長
長谷川 浩

 安上がりで一見豊かな食環境は、色付け、味付け、防腐のために多用される化学物質(食品添加物、農薬、消毒薬など)が原動力になっています。最近、表示義務の無い化学物質でも、アレルギーを起こす人が目立ってきました。一般毒性が低くても、歴史の浅い物には未知の危険性が潜むと考えたほうが良いでしょう。
 また、食品全般に嗜好性がエスカレートし人々は依存性を強めています。この弊害として、アレルギーばかりでなく、生活習慣病という様々な病気が増えていることは周知の事実です。これに加えて、私の師、後木は「依存物が味覚障害を起こす。本来は、身体に必要な物を美味しく感じ、度を超せばまずいと感じる。しかし、依存症になるとその味覚が狂ってしまう。」と言います。
 その日暮らしと言うより、その場暮らしが定着した昨今では、心地良いだけの宣伝文句と場当たり的な利便性に引きずられがちです。頭で考えることと裏腹に、つい外見と価格の比較だけで商品を選んでしまいます。そして、それを是正するはずの味覚まで狂っているのです。いっぺんに、理想とする「和食を手作りで」とまで望むのは難しいでしょう。まずは、健全な味覚を取り戻すことです。
 それには、加工品でも、旬の素材を活かし食品添加物を使わず手作りの行程に準じた製品に仕上げることです。特に、10歳以下の味覚形成期には、せめてそのような食品までにして頂きたいものです。包装材料としては、瓶や缶、レトルトパウチなどが望まれますが、それでもゴミが増えるという問題は残ります。
 ですから、味覚を改善できたなら、次には時を移さず、手作りの範囲を広めて心の栄養まで満たすことを考えましょう。良い加工品でも、レジャーや非常時の補助手段くらいとする構想を描きたいものです。

長谷川 浩
長谷川クリニック院長

札幌市北区で開業する小児科・アレルギー専門医。幅広い視野でアレルギーの治療にあたり、食事の改善を中心とした生活指導を積極的に行っている。米アレルギーの一部に「ゆきひかり」が有効だということを調査し、いち早く報告した。
医学博士。日本小児科学会認定医。日本小児アレルギー学会会員。日本アレルギー学会会員。

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